1999年の初夏、これが届いたときは感動しました。ティック・シローと言えば、当時では女性のクリスティナーと並んでいわば新時代のダンサブルでコンテンポラリーなタイ・ポップスの旗手といった存在でしたが、なんとこれ、ルークトゥンだったのです。しかも真正面から真摯に取り組んだ気合がひしひしの大力作。なんでも彼自身が古いルークトゥン曲から選んだ１２曲だそうですが、タイ音楽の識者に尋ねてもそんなに有名な曲はないそうで、こんなところにも彼一流のこだわりを感じさせる内容です。ホーンズまで入った音作りも申し分なしですが、なんといっても聴かせどころはvoです。本当に魂がこもってまして、ポップを歌っている時の彼独特のリズム感覚と天衣無縫な節回し、ファンキーとすら言えるあのグルーヴがルークトゥンでもいかんなく発揮された名作です。