大航海時代初期の大西洋はポルトガルの庭みたいなものだったのでしょう。その大西洋のほぼ中央に浮かぶアゾレス諸島は現在でもポルトガル領。この群島に伝わる古民歌をポルトガルの男性歌手が歌う16曲。室内楽風の弦楽奏がじつに深奥で古色を漂わせる一方、モニスの情感豊かで人間味のある歌唱は大衆感覚も滲ませ、結果、ユニークな大西洋のレトロ歌謡に仕上がっており、ファドのファンにもお薦めの逸品です。さらに興味深いのは、アゾレスの古民歌の中にはアフリカ音楽の影響を強く受けたものもあるそうで、本作にも同じくアフリカ起源と言われるスリランカのカフィリンニャに似た旋律も聞かれます。