これは懐かしい、というかまだこれが残っていたかという感じです。1994年のマレーシア女性作で、当時の多彩なマレー・ポップスの活気を見て取れる内容です。1994年といえばインドネシアのスローロック女王ニケ・アルディラが若くして亡くなる前年、マレーシアではファウジアー・ラティフあたりもあの熱めな哀愁マレー・バラードの世界に入り込み始め、その一方でエラらのポップロック勢も既に確固たる地位を築いてました。シティ・ヌルハリザの登場の2年前でもあります。そんな同国の華やいだ状況がこの一枚に詰まっています。ライトな感覚で何故かそれほど暗さを感じさせないスローロック曲、快活なポップ・チューン、一聴でマレーシアとわかる哀調のバラードなど全10曲。本来がちょっとハイトーンでキュートな声質のこの人が、これらいずれのタイプの曲調でも伸び伸びと熱唱する姿に打たれます。今となっては調べようがないのですが、大変な才能を持っていたこの人、その後はあまり活動していないみたいなのが残念。伴奏陣も超一級品で、現在のFMCレーベルはもうすこしお手軽な制作が多い気がしますが、本作での熱の入ったサウンド作りは圧巻です。