タイとカンボジアの国境周辺の大衆音楽カントゥルム。その名を広く知らしめたのが90年代にダーキーが演じた「カントゥルム・ロック」でした。我々の感覚で聴くとそれほど特別にロックっぽくはなかったのですが、しかし伝統スタイルのそれと比べればはるかにハイパーでスピーディーで、東北タイ（イサーン）のモーラムともまた違った刺激に溢れた新ジャンルでした。そのダーキーが若くして他界した後、そのカントゥルム・ロックを受け継いだ歌手がこのナームプンで、その彼女のライブ模様を紹介する珍しいアルバムです。舞台設営はモーラムやルークトゥンと同様ですが、楽器編成、コスチューム、踊り方などはやはりカントゥルム独特の感覚です。１曲を除いて全てクメール語で歌われており、あのダーキー風のノリノリのサウンドながら、ナームプンの女性らしい一種優雅でたおやかな節回しも聴きどころの１０編です。