やたらと清潔で綺麗で商業主義的なシンガポールという国からこういうものが出てくるとはにわかに信じられない。こと男性歌手によるマレー歌謡というジャンルに限った話ですが、泥くさめな民族音楽路線か宗教歌路線、またはロックバンド伴奏によるスローロック系やダンスポップ系と、両極端に分かれるマレーシアに対して、リリース量は少ないがじつにほどよく大衆歌謡感覚でしかもムラユー音楽の色彩も守った秀作がたまに出るシンガポール。これはジャケットがいかにも渋いですが、アコースティック感覚を重視しながら重厚な伴奏の質の高さ、ひたむきで滋味にあふれたvo、マレー色濃厚なのにもかかわらずすっきりとアレンジされた好プロデュース。３曲入りながらマレー歌謡の本格ファンは注目です。