在米越僑社会で圧倒的な名声を誇る名女性歌手。リリース数はなんとソロ作だけで50作近くあるうちのこれは2003年作で、自己名義としては多分25作目くらいでしょうか、まさに絶頂期の一作。先輩格のカイン・リー（Khanh Ly、現在本国で大人気のカム・リーとは無関係）と似た路線で、ベトナムの民歌世界から抜け出た現代的・都会的な作風でベトナム曲のほか日本や欧米曲のカバーも歌う人。ベトナム語のせいもあるでしょうが、それでも一聴してベトナム女性とわかる瑞々しさが聴かせどころです。ちなみに在米越境の世界では中島みゆきと五輪真弓の曲はスタンダード化していると言っても良いほどポピュラーで、本作でも冒頭から「恋人よ」が登場します。おかしな喩えで恐縮ですが、サリー・イップ（葉?文）をもう少しだけしおらしくしたという感じか、慎まし気でありながら芯の強い説得力のある歌唱力におもわず聴き入ってしまう10曲です。