これまで紹介してきた中部ジャワのガムラン音楽の中でも、これはとびきりに荘厳で濃密な内容です。影絵人形劇（ワヤン・クリット）音楽の作曲家として名高いキ・ナルト・サブド曲集で、かなり大規模なガムラン伴奏をバックに複数の男女歌手達が、悠然とそしてねっとりとして重層的なソロと合唱を繰り広げる長尺曲6編。これがまさに天衣無縫に宙を舞うかの様です。中には本来ジャカルタ地方の古謡でガンバン・クロモンの代表曲であるJaliーJaliなんかも中部ジャワ風に演じられてます。歌手名のクレジットがないなどインドネシアらしい杜撰さもありますが、これは名作の類と思います。同氏は既に故人ですが、本作のレコーディングにはガムラン楽団のリーダーとして参加しいる様です。音質も良く、中部ジャワの深夜らしい不思議な空気感に耽溺されること請け合いです。まさにこの国のこの地方にしかありえない音楽です。