ドゥグンからジャイポンガンまでスンダ地方（ジャワ島西部）のあらゆる音楽に通暁した名女性歌手タティ・サレー。でもこれほどユニークな試みに挑戦したアルバムはないでしょう。２台のカチャピ（撥弦楽器）にビオラ、セロ（擦弦楽器）、スリン（竹笛）に男性歌手の客演などによるトゥンバン・スンダ（Tembang Sunda)なのだが、なんとこれに本来は全く関係も脈絡もない筈のクロンチョンを取り入れてしまったという意欲作。スンダらしい密やかな弦のアンサンブルの奥で確かに鼓動するクロンチョン・ビート、これが意外なほどにスンダの雰囲気にマッチしています。昔はデティ・クルニアなど破天荒なチャンプルー精神漲る快作や怪作が多くておおいに楽しませてくれたスンダ音楽。その勢いも萎えてしまって久しいところに何とＣＤでリリースされてすぐに入手困難となってしまった珍盤です。