スンダ地方の東、チルボンには昔からタルリンという大衆音楽あり。本来はギターとスリンをフィーチュアした大衆音楽で、guiTAR とsuLING　を合体させた造語です。このタルリンがやがてダンドゥット化されたのがタルリン・ダンドゥットで、現地のみならずチルボン出身者の多いジャカルタ首都圏でも大人気を博したものでした。現在はカセットテープというメディアが消滅してしまい、かつ何故かVCDもCDもあまり流通していません。これはおよそ10年前にリリースされたアルバムで、非常に良い状態で残っていた貴重品です。サウンド的には副題のとおりディスコ風ですが、かつて氾濫した安っぽい手合いではなく、デティ・クルニアらの秀作を多く手がけたDIANレーベルらしいしっかりとした音作り。そしてこのスシラワティの歌声が素晴らしいのです。ニチャっとしたクセのある歌声の歌手が多いチルボンですが、この人の場合はふくよかな中音域にどこかしら哀感を帯びた歌声で、悠然として色っぽさも滲ませる実力派。マニアの方ならちょっと聴けばすぐにチルボンものだなとわかる特徴的なメロディ・ラインに乗って丁寧至極に艶っぽく歌う１０曲です。