東ジャワ・バニュワンギのダンドゥットは現在では東ジャワ各地で開催されるダンドゥット・ショウの映像作で様々な類型に接することができますが、ロックやディスコも盛り込まれたそれらほどショウアップされていない本来の王道的な姿がここに。エルナ・タニアは９０年代の初めころから数作出ていた人で、イッケに似たほどよい湿度感と可憐さを帯びた歌声が魅力の人。制作者もそれをわきまえているのか、Bibir Bermadu など彼女の持ち歌をカバーしていますが、中部ジャワっぽいイッケのそれに対して、こちらは東ジャワおなじみの横打ちのクンダンや鐘の音色が効果的で、地を這いずるかの様な独特のグルーヴが圧巻です。全１４曲中６曲で男性歌手アンドリアン・Ｓがデュエットなどで出てきますが、この人がこれまた心憎いほどの歌唱力を披露します。一応ノンストップ形式ですが、いわゆるパーティ用のダンスサウンド的なチープさは一切なしで丁寧至極に製作された逸品。